青宙通信 2017年度第4号
皆さんおはこんばんちは!
5月観測は楽しめましたか?今回はCRCにしてはたいへん珍しく、一晩中晴天で絶好の観測日和でした!
星座は、春と夏の主要なもの、北斗七星やカシオペア座のような周極星、そして朝焼けでかなり薄っすらでしたが、秋の大四辺形までが見られました。
さらに望遠鏡を用いて、木星の縞模様と、土星の輪も観測することができました。来月は梅雨に突入していくため、恒例の観測会は行われませんが、他の様々なイベントをお楽しみに!
さて本号の執筆者は、神保恒大郎くん、三坂真治くんのお二人です。実は2017年度青宙初の2年生ですね。今回のテーマは、多くの人が一度は夢見るであろう、アレについてです。私も生きているうちに体験してみたいものの一つです。
こんにちは!相模原キャンパス2年の神保恒大郎と三坂真治です。
いきなりですが質問です!皆さんは宇宙に行きたいと思ったことはありますか?一般人が宇宙に行くというと、少し前までは夢のようなことでしたが、ここ数年の技術の大幅な進歩により宇宙旅行も現実味を帯びてきたのです。そこで今回は「宇宙旅行」と「宇宙エレベーター」について紹介したいと思います。
宇宙旅行
皆さんは宇宙旅行と聞いて、どんなことを想像しますか?月まで行って月面散歩、ロケットの外に出て宇宙遊泳などたくさんあると思います。では、今現在実際に計画されている宇宙旅行とはどういうものなのかを、宇宙旅行の実施を発表しているクラブツーリズム・スペースツアーズのスケジュールを参考にして見ていきましょう。
出発地は皆さんもだいたい予想できますよね?もちろんアメリカです。余談ですが、このアメリカが2004年に世界初の民間宇宙船を宇宙空間に到達させる偉業を成し遂げたことにより、一般人の宇宙旅行が一気に実現に近づきました。旅行客は出発の四日前までに民間宇宙港「スペースポートアメリカ」に集合します。正直、宇宙旅行に行くのに集合が四日前?という気もしますが次に行きましょう。
そして出発までの三日間にて行うのが、事前トレーニングプログラムと専門医による健康診断です。当然ですが、宇宙空間は地球上とはまるで勝手が違いますのでそれなりのトレーニング、健康状態の把握が必要です。やはりここでも三日間の準備で大丈夫?という気がしますね。
いよいよ出発です。母船「ホワイトナイト2」に運ばれながら、宇宙船「スペースシップ2」は離陸し高度15km上空で母船から切り離され宇宙船は一気に加速、マッハ3.3のスピードで宇宙へ向かいます。このとき全身に感じるGは約3.3Gとされています。つまり自分の体重の約3.3倍の力がかかるということです。
前置きが長くなりましたが、大気圏を抜けるといよいよ宇宙、無重力の世界です。シートベルトを外せば無重力を体験できます。残念ながら機内から外には出られませんが、星々の輝き、地球の美しさ、太陽の力強さなどを宇宙で感じられる、宇宙旅行でしか経験できない貴重な時間です。しかしこの時間は約4分間とされています。先ほども述べた通り準備期間が短いので、長時間の宇宙滞在に身体が耐えられず異常をきたす恐れがあるからです。長期間の訓練をした宇宙飛行士らでさえ、長い宇宙での滞在が原因で後遺症のようなものが発症してしまうほど、無重力空間は身体への負担が大きいのです。
そして最後に待っているのが大気圏突入です。ここでは先ほどの約2倍、6Gもの力が身体にかかります。少しでも身体への負担が軽減できるよう、座席のリクライニングを倒した状態で下降していきます。そして最終的にグライダー飛行で宇宙港に戻っていきます。
下の図はここまでの流れを表したものです。
どうでしたでしょうか?ここまでがざっくりとした宇宙旅行のスケジュール例になります。全体で2時間、無重力体験は4分間、費用はなんと約3000万円という、旅行と呼べるのか分からないものですが、もしお金があれば行く価値のある貴重なものだと思います。残念ながら現時点では具体的な開始時期は発表されていませんが、近い将来に開始されるのは間違いありません。行きたいと思った方は、早くからの貯金をお勧めします。(神保)
宇宙エレベーター
宇宙エレベーターとは、名前の通り地上と宇宙を繋ぐエレベーターのことです。現実味のない話だと思う方もいらっしゃると思いますが、理論的には十分実現可能なことであり、近年の技術発展により数十年後には完成していてもおかしくはない話なのです。現に、東京スカイツリーや虎ノ門ヒルズの建設で有名な大手ゼネコンの大林組は、2050年までに宇宙エレベーターを造るという「宇宙エレベーター建設構想」を発表しています。そこで、大林組の構想を元に宇宙エレベーターについて紹介していきたいと思います。
第一に、なぜ宇宙エレベーターを造る必要があるのでしょうか。その理由の一つは、安全性において現在の宇宙開発の要となるロケットより優れているからです。ロケットは墜落や爆発の危険性があるのに対して、宇宙エレベーターはそれらの危険性が一切ないのです。その他に大気汚染がないことも理由の一つです。ロケットに比べ、ゴミや燃焼ガスが出ないため環境にもいいのです。そして一番の理由が、訓練を受けていない一般人でも宇宙に行ける可能性が高くなることです。複雑なロケットの操縦や宇宙ステーションとのドッキングなどが必要なくなり、ただ搭乗するだけで宇宙に行けてしまうのです。これらの利点のみを考えても、宇宙エレベーターがもたらす恩恵は絶大なものです。
次に、宇宙エレベーターの構造や仕組みについて見ていきましょう。大林組の構想によると、地球と月との距離の約10分の1の上空3.6万kmにターミナル駅、地球の海洋上に発着場を設置し、総長9.6万kmのケーブルでつないでエレベーターを運行させると発表しています。下の図がその構成概要図になります。
また、宇宙エレベーターを建設するうえで理解しておかないといけないのが静止衛星です。静止衛星とは赤道上空に位置する人工衛星であり、地上36,000kmの高度で時速10,800km、24時間で地球を1周しています。つまり、地球が1日で1回転するのと同じスピードで地球の周りを回っているので、止まっているように見えるのです。この静止衛星から地上にエレベーターを繋げば、理論的には建設可能なのです。下図がそのイメージ図です。
しかし、静止衛星は遠心力と地球の重力で釣り合いのとれた状態のため、静止衛星から地球側にテザー(ワイヤーやリボン状の紐)を伸ばすと、テザーの重みで重心がずれて静止衛星が地球に接近してしまいます。そのため、静止衛星から地球とは反対側にもテザーを伸ばす必要があるのです。これほどの長さになるとテザーの強度も必要になってきます。この構想を実現するために求められるのは、同じ重さで鋼鉄の180倍ほどの引っ張り強さがある素材です。ここで注目されたのがカーボンナノチューブです。カーボンナノチューブは理論上、宇宙エレベーターを建設するのに必要な軽さと強さを持っています。しかし、強度のあるカーボンナノチューブの量産は、世界中の研究機関で研究され始めたばかりなのでまだ実用的ではないのですが、近年既に必要な強度の3分の1ほどのものを大量に生産する技術が現れ始めています。(三坂)
6月の天体イベント
6月4日(日)
月と木星が接近
6月9日(金)
満月
満月と土星が接近
6月15日(木)
(衝については第2号参照)
6月21日(水)
月と金星が接近
6月24日(土)
Pick Up!!
月の見かけの大きさ
6月9日(金)の満月は、2017年のうち最小の満月とされています。スーパームーンという言葉があるように、月の大きさはタイミングによって変わります。もっとも、天体そのものの大きさは変わりません。見かけの大きさが変わってくるのです。見かけの大きさとは、対象物が近いときに大きく、遠いときに小さくなりますよね。月も同じです。
月が地球を公転する軌道は、楕円形をしているため、地球と月との距離は変化します。その他、太陽や地球の重力もこの距離に影響します。
一方、2017年で満月が最大、つまり月と地球の距離が最短になるのは、12月4日のことですが、この最大の満月と最小の時を比べると、大きさにおいて14%、明るさでは30%の差異がみられます。(二口)
編集後記
調べていて、一般人が宇宙に行ける日が近づいてきたことやその内容が分かって感動した一方で、どうしても3000万円という値段が頭から離れませんでした。(笑)今回紹介したような内容でなくていいので、自分が生きている間に海外旅行のような感覚で宇宙に行けるようになればいいなと思いました。(神保)
今回宇宙エレベーターについて調べて、宇宙エレベーターを建設するにあたって課題はまだありますが、近年の技術発展などを考慮すると、近い将来宇宙エレベーターについての大きなニュースが来ることは間違いないと思います。旅行で宇宙に行く日もそう遠くはないはずです。(三坂)
今号は、物数2男の二人に本編を書いてもらいました。しっかりした記事に仕上げてくれて、本当に助かりました。今後担当するであろう、他の2年生にも期待ですね。余談ですが、なぜこのコンビに執筆依頼をしたかというと、部内のとある会合で・・・おや、誰か来たようだ。(二口)
参考文献
- http://www.club-t.com/space/
- http://www.virgingalactic.com/
- www.jsea.jp/about-se/How-to-know-SE.html
- www.jsea.jp/
- https://www.obayashi.co.jp/recruit/shinsotsu/challenge/spaceelevator.html
- AstroArts https://www.astroarts.co.jp/alacarte/2017/index-j.shtml
- 国立天文台 http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2017/