青宙通信 2017年度第2号

 

 

 こんにちは、編集長の二口です。本日は年度始め、大学の入学式です。新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。そして青宙更新の日です。(四月バカ)申し訳ございません、たいへん遅れました。

 

 

 さてさて、そんな新生活で希望溢れるこの季節に取り上げますのは、私たちの生命の存続にも関わりかねないヘビーな話題でございます。今号の執筆者は、除名おじさんこと今期人事職兼CRC最凶の雨男、高野富瑛くんです。

 

 本編をどうぞ~

 

 

 こんにちは!青キャン新3年生の高野富瑛です。

 

 突然ですが、皆さんはノストラダムスの大予言をご存知ですか?

1999年7か月、空から恐怖の大王が来るだろう」という予言は当時の日本を震撼させ社会現象にもなりました。特にこの恐怖の大王というのを巨大隕石と解釈し、本気で人類が滅亡すると考える人も多かったようです。

 幸いなことに、この時巨大隕石が地球に直撃することはありませんでしたが、今後巨大天体が地球にぶつかり、人類が滅亡する…なんてことが起こる可能性は0ではありません。

 

 

 そこで、今回扱うテーマは「天体衝突」と「スペースガード」です。

 

 

 天体衝突は隕石や彗星などの天体が地球に衝突すること(そのまんま笑)で、フィクションではありますが、そのスケールの大きさとテーマの扱いやすさからかアルマゲドンディープインパクトなど有名な映画の題材にもなっています。そういえば去年大ヒットした某アニメ映画でも、この天体衝突が重要なポイントとして描かれていますね(ネタバレにつき自主規制)。一方スペースガードは、そのような事態からどうやって地球を守るかという取り組みや対策のことをいいます。今月の青宙では、天体衝突はどのような被害を出すのか、その対策はどうなっているのか、果たして人類は滅亡してしまうのかetc・・・といったことを少し真面目に紹介していきたいと思います。

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天体衝突

 天体衝突が出した被害の中でも記憶に新しいのは、ロシアのチェリャビンスクの隕石落下でしょう。2013年2月15日、ロシアのウラル地方にあるチェリャビンスクに隕石が落下、上空で隕石が飛散したこともあって被害が拡大し、その衝撃波で1500人もが負傷する大惨事となりました。

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 また、過去にはロシアのツングースカに直径60mほどの天体が落下、約2000平方kmの森林が焼ける大惨事も発生しました。当時はこの大爆発の原因がわからず、長らく謎とされていたのですが、近年の研究によって天体衝突によるものだと判明しました。この衝突のエネルギーは、島型原子爆弾1000個分とも言われ、1000キロ離れた場所のガラスが割れた、離れた場所から巨大なキノコ雲を観測できた、爆発は真夜中だったにもかかわらず、遠く離れたロンドンで人工灯火なしに新聞が読めたなどの証言からもその破壊力が伺い知れます。

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 さて、このような天体衝突ですが、実は毎日のように起こっています。いわゆる流星、隕石とよばれる10m以下の天体の大半は大気圏で燃えつきたり、人のいない地域に落下するため被害はほとんどありません。一方で、衝突する天体が10mを超えてくると話は変わってきます。さきほど述べたように、60m程の天体でさえ大きな被害をもたらすため、その大きさが100m、1km、10kmとなってくると、被害は想像もつきません。研究では、1km以上だと地球規模の災害、10kmを越えようものなら冗談ではなく、人類が滅亡してしまう可能性もあるとされています。

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 もし1km級の天体が地球の海に落ちれば大津波、陸地に起きれば大地震や大火災など甚大な被害が発生します。もちろん天体衝突が招くのは直接的な被害だけでなく、寒冷化、酸性雨オゾン層の破壊など間接的な影響も及ぼします。前述のように地球環境が急変する可能性が高く、衝突の衝撃というよりも、このような地球の激変で人類が生きられなくなる可能性が高いのです。ちなみに、現在地球の地軸は23.43度傾いていますが、この傾きの原因も巨大天体の衝突によるものという説が一般的です。

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スペースガード

  天体衝突は、起こる確率は非常に小さいものの、いざ発生しようものなら非常にヤバイことになる低頻度巨大災害に分類されます。しかし、ある意味非現実的な事象のため、同じ自然災害である地震津波程、対策が講じられていないのが実情です…

 

 

 そこで、この天体衝突問題を科学的に検討するため近年始まったのが、スペースガードといわれる取り組みです。日本では「日本スペースガード協会」というNPO法人が、日夜研究を行っています。

 

 

 具体的な取り組みとしては、

  •  常に地球に衝突しそうな天体がないか観測を行う
  • もし少しでも衝突の可能性がある天体があれば、注意深く観測を続け、その軌道などを計算する
  • その衝突の規模に合わせ、衝突回避策を検討する

などが挙げられます。ちなみにこの地球に接近しうる天体のことをNEO(Near Earth Object)といい、あの有名な小惑星探査機「はやぶさ」が探査した「イトカワ」も、このNEOであるとされています。地球軌道に接近するNEOは、現在発見されているだけでも約15000個にものぼり、観測技術の発展に伴い、今後さらに増えていくと予想されます。

 

 

 さて、3つ目に挙げた衝突回避策、つまり対策ですが、多くの人はミサイルなどで衝突天体を迎撃し粉々にするという方法を考えるでしょう。しかし現在の技術では、ミサイルの射程に入る頃には天体は地球とかなりの距離まで接近してしまいます。よって仮に迎撃に成功しても、爆散した無数の破片が地球に降り注ぎ、甚大な被害が出ることでしょう。よって、この方法はあまり有効な対策とはいえません。

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 そこで、現在主流となっている対策法は、天体になにか物質を衝突させ、軌道そのものを逸らしてしまうというものです。まず地球から遠く離れた宇宙空間で当該天体に衝撃を与え、ほんの少しでも軌道を逸らします。そのずれは地球に接近するまでの間にだんだんと大きくなり、最終的には地球との衝突を回避させることが可能となるのです。しかし、衝突まで時間がない場合はどうするか?情報公開はするべきか?法整備はどうなっているか?そもそも具体的にどうやって軌道を逸らさせるか?など課題は山積みです。

 

 

 はっきり言うと現在の地球には、確実に天体衝突を回避する手段はないのです。将来絶対的な対策案が確立されるまで、巨大天体が地球を襲わないことを願うばかりです…

4月の天体イベント

 4/1(土)夕方から宵

アルデバラン

4/8(土) 

木星おとめ座で衝

4/10(月)夕方~4/11(火)明け方

月と木星が接近

4/11(火)

満月

4/22(土)深夜から明け方

4月こと座流星群 極大

4/26(水)

新月

4/30(日)

金星が最大光度

 

 

  •  Pick Up!!

4/8(土)に木星が衝

 

 “”という単語をご存知でしょうか。英語では“opposition”、つまり惑星が太陽と正反対に位置することを指します。木星が衝ということは、太陽-地球-木星が直線状に並んでいることになります。衝の時期は、その惑星の観測に最適とされています。

 

 それは、

  1. 太陽と正反対に位置するため、深夜に南中する。つまり、一晩中その惑星は観測可能。
  2. 地球との距離が最も近くなり、光度が明るく、見た目の大きさも大きくなる。

などの理由によります。

 今年は、木星おとめ座と並んでいます。スピカと隣り合って輝いているので、すぐに見つけられるでしょう。

 また、4/10(月)夕方~4/11(火)明け方にかけて、これらに満月が接近します。月、木星、スピカを同時に観測してしまいましょう。(二口)

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編集後記

  本文最後で少し不安を煽る書き方をしましたが、少なくとも今後100年間は人類が滅亡するような天体衝突はないだろうというのが、今回このテーマを調べた上での僕個人の見解です。直近では2019年小惑星「2002 NT7」、2036年に小惑星「アポフィス」という比較的大きな天体が地球に衝突する可能性を持っています。しかしその確率はどちらも数十万から数百万分の一で、衝突の危険性は無いに等しいです。あまり過剰に心配せず、もし万が一Xデーがきても、なんとかなるだろうと気楽に構えるのが一番幸せなのかなと思います。(高野)

 

 2号目から早速更新が遅れてしまい情けないばかりでございます。高野くんが悪いんです!(すっとぼけ)どうも、編集長の二口です。今号から編集後記にも現れるようになりました。また、天体イベントのピックアップなど、今後はコラム的な記事も増やしていければと思います。自分のことを記事にしてくれー!って部員、絶賛募集中です。(二口)

 

参考文献

画像引用元