青宙通信 2017年度 第8号

 

 皆さんこんにちは!

 

 

 先日の9月観測、お疲れ様でした!星空はほんの少ししか見られませんでしたが、3年生にとって最後の観測会ということで、大いに盛り上がりましたね。よくカレンダーを見ると、私たちの学年は、もうあと1ヶ月強で引退なんですね…。全く実感が湧きません。そして、最後のビッグイベントといえるうちの一つ、相模原祭が目前に迫っていますね。各学年、それぞれ取り組むべきことを頑張っていることと思います。

 

 

 本号の執筆者は、大門栞奈さん、東海林綾さんの、情テクコンビのお二人です。実は2女は、今年度の青宙において初ですね。11月まで2女シリーズが続く予定となっています。今回は、ついこの間たいへん話題になった、あの天文現象も取り上げていますよ。

 

 

 

 さて今回は、東海林さんからは「太陽フレア」を、大門さんからは「星座の歴史」を、それぞれ取り上げてもらっています。では、本編をどうぞ!

太陽フレア

 こんにちは!今回青宙を書かせて頂くことになりました、理工2年の東海林です。私は、非常にタイムリーで、読んでくださる皆様も気になっているであろう「太陽フレア」のメカニズムや影響について調べてみました!

太陽フレアとは

 まず初めに、先日、日本時間9月6日に起きた「太陽フレア」に焦点を当てる前に、「太陽フレア」自体を詳しく学んでみましょう。そもそも「太陽フレア」とはどんなものでしょうか。

 

 

 「太陽フレア」とは、太陽における爆発現象のことです。別名、“太陽面爆発”とも言います。「フレア」とは火炎(燃え上がり)のことを意味していますが、天文学領域では恒星において発生する、巨大な爆発現象を指しています。ご存知の通り、私たち人類が住む地球から一番近い恒星は、太陽系唯一の恒星である太陽となります。太陽という恒星そのものについて詳しく知りたい方は、青宙通信2016年度第3号の後半を参照してみてください。

 

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 「太陽フレア」はもちろん、太陽系において最大の爆発現象で、小規模なものは1日3回ほど起きています。大きさとしては、通常1~10万km程度で、威力は水素爆弾10万~1億個と同じくらいあります。太陽の活動が活発なときに、黒点の付近で発生する事が多く、こうした領域を“太陽活動領域”と呼びます。黒点には、特に強い磁場が存在しています。この、太陽活動領域中に蓄積された磁場のエネルギーの一部が、熱エネルギーや運動エネルギーに変換され、太陽コロナのエネルギーとして突発的に解放される現象こそが、「太陽フレア」となります。

 

 

 コロナプラズマ(コロナとは、太陽の彩層から外側を取り巻くガスの層で、主成分の水素やヘリウムが電離している、プラズマの一種)は元々もつ数百万度の温度から数千万度にまで加熱され、多量の非熱的粒子が加速されます。同時に衝撃波が起こったり、プラズマが噴出し、時おりそれらが地球に接近して、突発的に磁気嵐を起こすのです。

 

 

 また、太陽フレア発生の際には、太陽表面に2種類の特殊な磁場構造が生じていることが、地球シミュレータによる詳細なシミュレーションと、太陽観測衛星「ひので」による観測データの解析で明らかになりました。下の画像は、地球上で生じた磁気嵐のマップを表します。

 

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太陽フレアの及ぼす影響

 それでは、太陽フレアが起こると地球にどのような影響が出るのでしょうか。そもそも、地球は大気圏に守られているため、通常人体に影響は及びません。

 

 

 太陽フレアによって引き起こされた磁気嵐は、地球の地磁気を乱します。そのことで、地球上ではオーロラや地場の変化も観測されます。送電線には誘導電流が作られ、送電システムが障害を起こし、停電してしまいます。また、人工衛星や無線通信などにも障害を及ぼします。

 

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 それでは、先日に起きた「太陽フレア」の影響について調べてみましょう。

 

 

 日本時間9月8日午前8時50分ごろ、太陽の表面で起きた「太陽フレア」で生じたコロナガスが、地球に到達しました。前述した通り、太陽では複数回の爆発が起きていますが、今回の影響は9月6日に起きた、通常の1000倍規模の爆発によって生じた可能性が高いと言われています。

 

 

 アメリカ海洋大気庁(NOAA)の発表によると、‘コロナガスの到達に伴う磁気嵐は猛烈に大きな「G4」クラスであり、11年間に100回程度の規模だ’とされています(磁気嵐の強度は、小さい方から順に、G1からG5までの5段階で表される)。磁気嵐は、日本時間午後3時ごろまで続く見込みだと伝えていました。下の画像は、今回NASA人工衛星が観測した太陽画像になります。

 

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 今回は目立った影響はないようですが、過去には様々な影響が出たといいます。1989年にカナダで大規模な停電が発生したほか、2003年には日本の人工衛星が故障。また、普段は見られないような場所でもオーロラが観測されることもある、ということです。

 

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 さらに、気になることが一つ。

 

 

 実際に今回、熊本地方を震源とするマグニチュード4.1の地震、秋田大仙市を震源とするマグニチュード5.3の地震と、メキシコ・チアパス州沖を震源とするマグニチュード8.0の地震が発生しました。これらはすべて、「太陽フレア」の影響が来るという時間に起こっています。

 

 

 さらに、2011年の東日本大震災の前日にはX.17クラス(5番目に大きい)の「太陽フレア」が発生していたそうです。(太陽フレアの規模を示すものの一つに、X線の強度で測るものがあり、A,B,C,M,Xの順に規模が大きくなります。それぞれのアルファベットの中にも、さらに段階分けがなされています。)

 

 

 宇宙での現象と地層の現象、何か関係があるのでしょうか。今の時点では詳しい関係の真相は明らかになっていませんが、「太陽フレア」と大きな地震、もう偶然とは思えなくなっています。

 

 

 やはり、宇宙にはまだまだ解明されていない現象がたくさんありますね。深くまで調べると難しいことだらけですが、この青宙を読んで少しでも興味を持って、楽しんで学んで下さっていたら幸いです。(東海林)

星座の歴史

 こんにちは。今月の青宙を担当します、理工二年の大門です。私たちは今、学園祭に向けてプラネタリウムを制作しています。プラネタリウムでは星座の解説なども行っているので、今回は星座がなぜ作られたのかを説明していきたいと思います。

星座の起源

 星座はいつ頃、どのようにして作られたかご存知ですか?星座は5000年前チグリス川・ユーフラテス川近くで興ったメソポタミア文明ではすでにあったと考えられています。よく羊飼いが夜に羊の番をしながら星座を作ったといわれますが、この羊飼いとはバビロニア人のことで、バビロニア人が活躍したのは3000年ほど前であるため、これよりも前に星座は作られていたということがわかります。

最古の星座?

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 2000年8月に、フランスのラスコーの洞窟の壁画に星が描かれているのが発見されました。ラスコーの洞窟の壁画は1万6500年ほど前に描かれたものであると考えられており、その中に「デネブ」、「アルタイル」、「ベガ」で構成される夏の大三角と思われる星の並びや、プレアデス星団(すばる)が描かれています。夏の大三角は北半球で最も目立つ星であることや、1万6500年前は歳差運動(青宙通信2017年度第7号参照)により一年中地平線上で姿を現していたため、この星が壁画に選ばれたのでしょう。プレアデス星団は、壁画の中では牛の肩の部分に描かれていますが、実際の星空でも、この星団は「おうし座」の近くにあることで知られています。

星座の役割

 星座は5000年前からあったと考えられている、と前述しましたが、確実にこの時期には星座がつくられていた、といえるのがアモリ人(3800年前)の時代です。この時、「オリオン座」、「おおぐま座」などがつくられたとされています。農業を行うにあたり、収穫の時期などの目安となる季節を知る必要があったため、星座を観察して暦をつくったのだろう、と考えられています。

 

 

 暦において活躍したのがカルディア人という人々です。この民族は、1年は12ヵ月、1週間は7日、1日は24時間、角度の1周は360度ということを確立し、天文学や数学を発達させました。また、高度な自然科学や天文学で、惑星の日食する時期会合周期を高い精度で計算していました。

 

 

 星座の起源はメソポタミアですが、エジプトでも天文学は発達していました。古代エジプト人は、ソティスおおいぬ座シリウス)を重要視しました。一つ目の要因は、シリウスは全天で一番明るい星であるためです。二つ目は、この星が夏の間に、太陽の光で約70日間姿が見えなくなった後、夏至の辺りの日の出直前に現れ始めると、ナイル川の増水が始まる目安になるからです。このシリウスが日の出の直前に見え出す日が、エジプト暦の元旦とされ、そのような注意深い観測から、1年=365日という、現在も私たちが使っている太陽暦を手に入れることになったのです。

 

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 エジプトからメソポタミアに話を戻すと、メソポタミアギリシャとの貿易を行っていましたが、そのためには船に乗る必要がありました。そこで、船の上でも方角の目印となるものとして星が選ばれ、覚えやすくするために星座が作られていったのです。

プトレマイオス

 その後、時代は流れてたくさんの天文学者天文学を発達させました。そのなかで覚えておいてほしいのが、ギリシャ天文学者プトレマイオス(トレミー)です。この人は天動説を確立した功績があり、また、トレミーの48星座でも有名です。トレミーの48星座とは、二世紀頃にあった星座を48個に統合整理して発表したものです。ヨーロッパでも翻訳されて聖書、キリスト教の思想を支えるものとなりました。このトレミーの48星座は、数や名前を変えられたりすることなく、1500年間も使われ続けました。

 

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15世紀以降の星座

 突然ですが、「けんびきょう座」を知っていますか?これまで説明してきた星座は、紀元前から紀元後5世紀以内のものです。顕微鏡はそんな時代にはありませんよね。この星座は、15世紀以降にやってきた星座制作ブームの際に作られたものなのです。

 

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 このブームには2つの要因があります。一つ目は、航海技術が発達してヨーロッパの人々が南半球にようやく足を伸ばせるようになると、北半球では見たことのない星々を見つけました。船を進めるために星の位置を覚える必要があり、そのために星座を作ったのです。二つ目は、望遠鏡の発達により暗い星が観測できるようになり、トレミーの星図では空白になっていた部分に星座が作られた、という要因があります。

現在の星座

 現在は、今まで作られてきた多くの星座を星図にまとめるには、あまりにも数が多すぎるため、国際天文学連合88個に整理されました。

 

 

 星座にもたくさんの歴史がありましたね。隣り合う星座の作られた年が、実は1000年以上も違うなんてこともあるなんて、面白いと思いませんか?この記事を読んで、少しでも星座に興味をもって星空を眺める機会を作っていただけたら嬉しいです。(大門)

10月の天体イベント

10月4日(水)

中秋の名月(十五夜)

10月6日(金) 未明から明け方頃

東の低空で金星と火星が大接近

10月6日(金)

満月

10月18日(水) 未明から明け方

東の低空で、月と金星が接近

10月20日(金)

新月

10月21日(土)

オリオン座流星群 極大日

10月24日(日)

細い月と、土星が接近

編集後記

 青宙の執筆の機会を頂き、有難うございました。最初は不安ばかりでしたが、先輩方にもアドバイスを頂き進めることが出来ました。興味があることを書こうと思い、高校の時から好きなブラックホール暗黒物質重力波を調べようと思ったのですが、過去に先輩方が青宙に書かれたということで、先日に起こった「太陽フレア」について調べることにしました。知識が全くない状態からだったので、理解するのに苦労しましたが、自分のように「太陽フレア」を初めて聞く方でも楽しく理解できるよう心がけました。この青宙を読んで、少しでも宇宙に興味を持ってくれたらと思います。最後までお付き合い頂き有難うございました。(東海林)

 

 

 今回は、観測会で先輩に教えていただいた星座の中で、動物の名前などに混ざって突然、「けんびきょう座」などの道具の名前が星座になっていることに不思議に思い、聞くと星座の作られた時期が違うということを知って、興味を持ったので掘り下げてみました!皆さんがよく知っているような星座は、何千年という年月の間、人々に親しまれてきました。今となっては星座を使って航海をしたりもしないので、星座が生活になくてはならない存在ではなくなってしまいましたが、何千何億という時間姿を変えずにあり続け、昔の人々の生活を支えた星々を見上げる時間をとってみてはいかがでしょう。(大門)

 

 

 今回は、つい最近ニュースでたいへん取り上げられた、「太陽フレア」と、「星座の歴史」がテーマでした。星座の歴史は、夏合宿において我らが観測隊長フジパイが紹介した、南天の星座にインスピレーションを受けたのでしょうね。星座は元々ツッコミどころが多いものですが、南天のものはそれが顕著ですよね。さて、南天の星座はCRCプラネタリウムには出てきませんが、1年生の皆さんは北天の秋と冬の星座をしっかり覚えて、説明できるようにしましょうね!(二口)

参考文献

https://trendyinfo.tokyo/3086.html