青宙通信 2017年度 第6号

 

 どうも、本日は7月25日、テスト期間初日ですね。ここを過ぎれば夏休みです!大量のレポートに追われている人も、十数個のテストが待ち構えている人も、テスト期間外に全て済んでふんぞり返っている人も、笑顔で夏休みを迎えられるようにしましょうね!(他人事)

 

 

 今回の執筆者は、三國孔明くん、相澤勇王くんのさがキャン3男コンビです!たいへん頭を使う、興味深い内容になっております。

 

 

 

 さて、今回は二人それぞれ異なる内容を書いています。みくにゃん(三國)は「宇宙はなぜ暗いのか?」というテーマを、アイザック(相澤)は「自転と公転の同期」というテーマを取り上げています。

 みくにゃんのテーマの方から、本編をどうぞ!

宇宙はなぜ「暗い」のか?

 こんにちは、三國です。普段当たり前のように見ている空ですが、それはとても多くの謎を含んでいます。

 「夜が暗いのはなぜ?」と考えたことはあるでしょうか。大半の人にとっては当たり前の事のように感じますが、天文学者にとっては大きな謎の一つでした。今回この謎を解明するため、宇宙はなぜ「暗い」のか? という本の内容から、書いていきたいと思います。

 

 

 「夜が暗いのはなぜ?」という疑問を詳しくすると、「宇宙の恒星の分布がほぼ一様で、恒星の大きさも平均的に場所によらないと仮定すると、空は全体が太陽面のように明るく光輝くはず」となります。これはオルバースのパラドックスと呼ばれています。夜が暗いのは当たり前のように感じてしまうでしょうから、まずはこのパラドックスについての説明をしたいと思います。

 オルバースのパラドックス

 

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 今、あなたは森のなかに立っています。周りには木が生い茂っており、この森が何処までも広がっているとしたら、あなたは森の外を見ることができるでしょうか。近くの幹は大きく見えて、遠くの幹は小さく見える。2つの幹の間には遠くの幹が見える。その遠くの幹同士の間には更に遠くの幹が…、と見渡す限りどの方角も木が遮った場合、外の世界を見るのは不可能に思えます。空が明るいはずだというのは、これと同じ理屈です。どこを見ても星の光が見えるなら、何もない真っ暗な宇宙は見えるはずもなく、宇宙は星の光で明るいという結論が出ます。

説①

 それでは、考えつく説明を挙げていきます。

 まず、「あまりにも遠くにある星は暗すぎて見えないから」という説明を考えます。恒星までの距離が2倍になると明るさは1/4に、距離が3倍になると明るさは1/9と距離の二乗に反比例して見かけの明るさは暗くなっていきます。次に、奥行きと見える範囲について考えると、ある範囲の空を見た場合、奥行方向の距離が2倍になると、見えている面積は4倍に、奥行方向の距離が3倍になると、見えている面積は9倍と、ここでも二乗の法則が成り立ちます。

 

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 ここで、恒星が同じ密度で一様に分布しているとすると、距離が2倍になると、恒星一個から届く光の量は1/4になりますが、見えている面積が4倍になるので見える星の数が4倍になります。このため、それらが打ち消し合って、届く光の量は同じになります。近くにある恒星は太陽のため、図の一番目のレイヤーを太陽と考えると、私達が夜に見る、四番目のレイヤーというのは、太陽と同じくらい明るいことになります。しかし、実際、夜は暗いため、これでは説明できないことが分かります。

 説②

 では、「宇宙の塵に光が吸収されてしまった」という説明はどうでしょう。実際、天の川の中央付近には、宇宙塵に光が吸収された、ダークレーンと呼ばれる部分があり、黒い筋があったり、暗い領域があったりします。しかし、この宇宙塵では、夜が暗いことは説明できません。

 

 

 なぜなら、この宇宙が無限に存在する星の光で明るかったとしたら、宇宙塵はその光を吸収すると、そのエネルギーで温度が上がってしまうからです。前に説明したように、太陽のような明るい光が降り注ぎ続けると考えると、宇宙塵は常に全方向から太陽で熱せられているのと同じ事となり、熱い光を吸収しても、それと同じだけの熱い光を放射してしまいます。そのため、宇宙に存在する光の量は変わらず、宇宙を暗くすることはできないのです。

説③

 光を吸収しても放射しなければいいのか、と考えた場合、「ブラックホールが光を吸収している」という説明が考えられます。星には重力があります。星の重力から解放されるための速度を考えた時、それが光速を超えていた場合に、その星はブラックホールと呼ばれます。ブラックホールというのは、未だに謎が多く、天文学の神秘の一つでもありますが、今回の説明には適しません。

 

 

 なぜなら、ブラックホールは光るからです。厳密に言うと、ブラックホールに向かって物が落ち込んでいくその周囲の物質が光るのです。ブラックホールに物質が落ちる時、お風呂の栓を抜いたときのように渦を巻きながらその周囲に、降着円盤と呼ばれる渦を作ります。この降着円盤が摩擦などによって温められて超高温になります。また、詳しいことは分かっていませんが、降着円盤の一部はブラックホールの両極から吐き出されます。これはジェットと呼ばれます。

 

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 これで、ブラックホールと空の暗さは関係ないことが分かりました。しかし、ブラックホールはとても不思議で面白いので、気になったら個人的に是非調べてみてください。(参照:「青宙通信 2015年度 第8号」 「2016年度 第7号」)

説④

 これまで、色々と説明を考えましたが、どれも駄目でした。では、空が暗い本当の理由は何なのでしょうか。

 これを考えるため、もう一度遠くの星を見る時の話を考えます。多くの星から光が届くとしても、その届いている光というのは、直線状にある最短の星となります。その星の後ろの星は、前の星によって光が遮られてしまい、見ることができないからです。それを踏まえて考えると、私達が見ている星というのは平均どれだけ離れているのでしょうか。

 

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 星の面積をS、地球までの距離をLとすると星の光が埋める体積はSLとなります。最短距離の星がSLのため、星の数密度nはn=1/SLとなります。つまり、星の数密度から最短の星までの距離が求められます

 

 

 では、星の大きさを太陽の半径70万kmと考え、太陽系から10光年の距離にある恒星の数が12個という事実から数密度を見積もると、地球から星までの距離は1京(10^16)光年となります。私達の銀河系はとても密度が濃い領域にいるため、これを考慮すると、夜空を見上げた際に見える星の平均距離は、1000垓(10^23)光年となります。つまり、私たちが1000垓光年の彼方まで見通せるほど、星の数密度はスカスカなのです。そして、1000垓光年離れた星から光が届くには1000垓年必要です。恒星の寿命は100億から1兆年程度です。すなわち、1000垓年の時間をかけて私たちに届く間、恒星はずっと光っていられず、むしろ恒星が光っている時間はほんの僅かです。全ての恒星の寿命が太陽と同じ100億年と考えると、恒星が光っている確率は1/10兆(100億/1000垓)程度となってしまいます。

 

 

 結論とすると、夜空を明るくするために見渡すと1000垓光年の彼方まで見る必要があり、距離に対して星の寿命が短いため、確率的に1/10兆しか光ってない事になります。そのため、私たちに届く光の量も1/10兆になり空が暗いことが解決されました。

 

 

 また、この宇宙は138億年前にビッグバンにより誕生しました。ここから分かる事として、私たちは138億光年彼方までしか見ることができないことが分かります。そこより遠い所は宇宙時間的に足りないのです。

 

 

 つまり、オルバースのパラドックスに対する回答は「時間的にも空間的にも宇宙は有限なので、宇宙の観測可能な範囲に存在する星の数は有限であり、しかも遠くの星や銀河からの光が私達のもとに届くのに、宇宙年齢では時間が足りないから」となります。

 

 

 今回、この説明をする上で重要な点をこの宇宙はなぜ「暗い」のか? から書きました。この本には、他にも星間距離の測定方法や、人工衛星ブラックホールなど、多くの宇宙に関する話が載っており、このパラドックスをより詳しく知りたい、という方にお勧めの本です。興味を持ったなら是非読んでみてください。(三國)

自転と公転の同期

月の見え方

 こんにちは!相澤です。皆さん「月」って知っていますか? 知ってますね!では月がずっっと同じ面を地球に向けているということは知っていますか?

 

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 ほれこんな風に、暗くなっているところ、明るくなっているところは変わりますが、三日月でも半月でも満月でも、模様は同じなのです!月は地球の周りを公転していますが、月は月でグルグル自転していますよね。ではなぜ同じ面しか見えないのでしょう。なぜ月の裏側は私たちから見えないのでしょう?

 

 

 その理由は、月の自転周期と公転周期が同じだからです。

 つまり、月が地球を一回転するのに要する時間と、月自体が一回転するまでの時間が等しいのです。自転周期と公転周期が同じだなんて月って変わった天体ですねえ…。

 

 

 と思いきや、実はありふれた現象なのです!太陽系にはほかにも自転と公転が一致している天体があります。例えば、

惑星:火星                         衛星:フォボスダイモス

  :木星         :ガリレオ衛星

(準)惑星:冥王星               衛星:カロン

などがそうです。

 

 

 冥王星は、太陽系の惑星から外されちゃった星ですね。なんとこの冥王星カロンカロンの自転と公転だけでなく、冥王星の自転までもが一緒になっているんです(カロンの自転=カロンの公転=冥王星の自転)!こうなるともう両方がずっと同じ面を向けて回ります

 なぜそんなことが起こるのか、今回は月と地球を取り上げて、ザックリ説明したいと思います。

 

 

 月の概要については、過去のこの記事をご参照ください。「青宙通信 2016年度 第2号」

 月の自転と公転

 それでは、本題に入っていきます。月はもともと、公転より自転の方が速く、くるっくる回っていました。それにだんだんブレーキがかかっていきます

 

 

 まず、「潮汐」というものについて考えていきましょう。

 

 

 ある天体から受ける重力は、その天体に近づくほど大きくなります。我々は地球には強く引きつけられますが、遠く離れた星に吸い上げられたりはしませんね!

 この“距離によって引きつけられる力の大きさが変わる”のは、天体の内部でも同じなのです!月にかかる地球からの引力は、場所によってそれぞれ大きさが違います。下の図を用いて説明すると、地球から遠いA地点よりも地球に近いC地点のほうが強く引かれるので、月の形は横長に伸び、楕円形に近づきます。この伸ばすパワーが潮汐です。

 
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 “潮汐”と聞くと、潮の満ち引きをイメージされると思いますが、もちろんそれが由来です。海水面が目に見えて潮汐力の影響を受ける一方で、わかりづらいですが、地表面も例外ではないのです。

 実際はこの潮汐力によって膨らんだ部分(潮汐バルジといいます)は、月の自転に引きずられてちょっと傾いています。しかしここで、地球が月の膨らみを引っ張ります。

 

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 このとき、2つの膨らみと地球との距離に差が生じるので、2カ所で引力の大きさがちがいます。


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 そして、この赤い矢印が月の自転のブレーキになる力です!この作用によって月の自転速度は僅かに遅くなります。この作用は、地球から見て月が回転している限り半永久的に続きます。


 
 じゃあいつ終わるのか、

 

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…地球から見て月の回転が止まるまでです!

 これすなわち、衛星の自転周期と公転周期が一致するまでです!!堅苦しくいうと“自転と公転の同期”、“同期自転”、“潮汐ロック”などというそうです!!!

 

 

 こうして月の自転周期と公転周期は同じになったんですね~!詳しくは参考資料のURLなどから調べてみてね!

 

 

 最後に、月は地球に引っ張られて自転と公転が同期しちゃいましたが、地球も月に引っ張られて自転は遅くなっています。地球も最初は一日5時間ほどで、6億年前では22時間ほどだったそうです。ビックリです!今でもだんだんと遅くなっていて、50年あたり0.001秒くらい遅くなっているのだそうです!やがては冥王星カロンのように、お互い同じ面を向けあい続けるんでしょうねえ。

 また、訳あって月は地球から毎年約3~4cmずつ離れていっています!50万kmほどで安定するそうですが、そうなると皆既日食が見られなくなっちゃうかもしれませんね。(相澤)

 

8月の天体イベント

8月3日(木)

月と土星が接近

8月8日(火) 未明から明け方

満月

部分月食

8月12日(日)~8月13日(月)

ペルセウス座流星群 極大日

8月19日(土)

月と金星が接近

8月22日(火)

新月

北米にて皆既日食

8月25日(金)

月と木星が接近

8月28日(月)

伝統的七夕

8月30日(水)

月と土星が接近

編集後記

 wikiの参考文献が二個だったのが衝撃的でした。本以外の内容を書きようが無くて、広げられなかったのが悔やまれます。本の内容ほぼ丸パクリだけど大丈夫なのか…?まぁ、面白いので是非、本を読んで下さい。(三國)

 

 

 今回は、自転と公転の同期について書かせていただきました!今回は潮汐力の影響だけで説明しましたが、月の重心の偏りを考慮する説もあり、どちらが正しいのやら…(汗)月の重心の偏りは、月のでき方(参照:「青宙通信 2016年度 第2号」)にも関連してくるので、月の生い立ちを調べるのもいいと思います!(相澤)

 

 

 今回は、実は青宙書いてなかったシリーズの一環でした。みくにゃんのはとても難しい、哲学的な問いでした。僕も例の本を読んでみたいと思います。かなり新しい書籍なんですね。アイザックは、図を駆使しながら、結構ふざけて書いてくれましたね。こういうのは、どこまで表現を直して、どこをそのままにしておくか、という判断が困ります。クレームじゃないよ。あと、wikiが参考文献にあることを身内がツッコんでしまうのはNG。(二口)

参考文献